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硝子細工って飴みたいで美味しそうです!


by tahiri

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戦闘描写練習

 戦闘描写の練習にちょっと書いてみた。


 鈴虫の声が聞こえる。
 秋の夜は長く、暗い。しかし、月さえでていれば、十分に前は見える。鍛錬はできる。
 庭から聞こえる鳴き声を、むしろ楽しみながら、如月千早は目の前のわら人形を見据えた。
 如月流の極意は、重心の移動にこそある。
 精緻な重心移動が、神速の剣先が現出させるのだ。
 幼いころより、なんどきいたかもわからぬ声。頭ではなく、身体で理解している。
 ゆっくりと手に持った木刀を上段へと掲げる。基本形「滞空」。全ての技は、この型から入る。重要なのは、何処に剣があるかではない。どこから剣が生えているか、だ。
 肩幅に開いた足を、剣先があがると同時に右足を半歩前に。
 重心は地に対して垂直ではない。少し後ろに倒す。左足のつま先と、右足の踵に体重が乗る。
 そのまま、腰を少し捻る。さらに身体の軸が捻じ曲がる。
 押せば倒れてしまうような、あまりに不安定な型。遠方の敵に対する、「滑り」の型だ。
 おそらく、武道の達人が見れば不安に思うであろう。
 あまりに重心が高すぎる。これでは、速度ののった斬撃も、一撃が重い攻撃もできやしない。
 しかし、これでこそいい。そのようなものを求める必要はない。
 不安定なまま、重心をさらに上へ。半歩突き出した右足のつま先に体重を預け、前傾姿勢となる。同時に、剣先をゆっくりと下に下ろしていく。常道とは異なり、右手でしっかりと柄を握り、左手は半ば開いている。
 ゆっくりと、円を描くように――同時に、さらに重心を前へ、前へと移動させる。
 そして、身長半ばまで剣が降りたとき――。
 一閃。
 右手のみで繰り出された、渾身の突きは八尺はあった人形との距離を一瞬にして埋めた。
 びぃぃん、と千早の手から放された木刀は、藁人形の喉に埋まっている。そこ以外の、どこにも破壊をもたらさずに。
 これぞ、如月流奥義「翡翠」。
 清涼なる川を旋回し、獲物と見ると一瞬にて嘴を突き刺す川蝉がごとく、緩やかなる円の軌道と、鋭き点の軌道が組み合わさったこの業は、何ものにも交わすこと適わぬ死をあたえるのだ。
「――ふぅ」
 やっと、息を吸う。
 まったく――
「まだまだ、ね」
 剣の道は遠く、果てしない。


 なんか違う気がする。
by tahiri | 2008-10-02 20:10